これまで「スターター・パック」として、フランクリン・プランナーのタイム・マネジメントをお伝えしてきましたが、2017年、「マスター・フォーム・パック」として生まれ変わりました。
この「マスター・フォーム・パック」は、フランクリン・プランナーのタイム・マネジメント・コンテンツ、つまり「フランクリン・プランニング・システム」よりわかりやすく、より実践しやすくしていただくために、全面的に改良した、新しい「タイム・マネジメント実践ツール」です。
また、「マスター・フォーム・パック」には、時間管理(行動管理)のコンテンツ、スキル、ツールだけではなく、効果的・効率的な思考プロセスも身につけていただけるように、さまざまな思考のフレームワーク集もご用意しています。
効果的なタイム・マネジメント、プランニング・マネジメントを実践していただくことで、ビジネスにおける高い生産性や仕事とプライベートのライフバランス、そして、人生の大きな目標の達成に向けた充実した日々を実感していただくことができるでしょう。
「もっとも大切なこと」とは、文字通り、あなたにとってもっとも大切なことです。
大切なことと言っても、ものやお金ではなく(ものやお金がもっとも大切という人もいますが!)、より豊かな人間関係、充実したビジネスやプライベートのために必要な「心の糧」ともいうべきものです。
その「もっとも大切なこと」を、フランクリン・プランナーでは、ミッション、役割、価値観として表現することをお勧めしています。
私たちには、職場での役割、家族での役割など、さまざまな役割があり、その役割の中で生きています。たとえば、職場では部下、同僚、プロジェクト・メンバーといった役割があります。家族では、子ども、兄弟、夫、妻などの役割があります。
人は誰でも、人生においてさまざまな役割があります。その中には、自発的に選んだ役割もあれば、周囲の関係や環境から生まれた役割もあります。こうした役割は、私たちの基本的な価値観や行動、判断に影響を与えています。
あなたの役割をたくさん考えてみてください。
役割を考えることは、あなたにとって大切な人間関係、その関係をより良くするために何をするべきか、また、役割を果たすための責任について考えることです。
ポイントは、同じ役割を考えたとしても、その役割に伴う責任をどのように考えるかです。たとえば、会社で「営業マン」という役割があるとします。同じ営業マンでも、ある人は、責任として「自分のできる範囲でそつなくこなす営業マン」と定義し、ある人は「会社の将来の命運を握る営業マン」という責任を定義したとします。
どちらがより有意義で、大きな成果を得るでしょうか?
役割が変われば、行動が変わるのです。
価値観は誰でも持っています。何かを選択するとき、決断をするとき、判断をするとき、その源には価値観があります。たとえ意識していなくても、価値観はすべての人の中にすでに確固として存在していて、選択や行動の基準となっています。
ただし、自分の価値観を自分でわかっていないと、あらゆる場面で判断を迷うことにもなりかねません。
自分が信じる価値観が明確であればあるほど、どのような難しい局面においても、迷うことなく判断でき、ブレない人生を送ることができるのです。
自分の価値観をもう一度振り返り、言葉として書いておく。
この演習がぎっしりとつまっています。
ミッション・ステートメントとは、言葉が少し大げさかもしれませんが、自分が何のために生きていくのかという「人生の目的」のことです。
個人の憲法と言ってもいいでしょう。この憲法に従って生きていくのです。
個人の憲法が正しいものであるならば、どのような社会の変化や状況の変化があっても問題なく生きていくことができるでしょうし、自信をもって人生を歩んでいけるでしょう。
そういう意味では、価値観と似ているかもしれませんが、要は書き方の違いです。
あなたがすでに価値観を持っているように、ミッション・ステートメントもあなたの中にすでに存在しています。あなたは、それを発見すればいいのです。個人的なミッション・ステートメントの形式や内容にこだわる必要はありません。歌や詩などで表現する人もいます。
ミッション・ステートメントを書くことによって、自分自身の生きる指針を持つことになります。マスター・フォーム・パックには、ミッション・ステートメントを書くための演習がたくさん用意してあります。
せっかく、自分の「もっとも大切なこと」が発見できたのですから、具体的な行動目標を設定しましょう。
それには、具体的な目標を持つことです。そしてさらに、目標を一口サイズに切り分けることです。そうすることで、ミッションに実行がつながり、日々の成長につながるでしょう。
あなたの目標は、いつ、どのようにすれば達成できますか? また、どのようなマイルストーンを経て、実現へと近づきますか?
目標やステップは、できる限り小さい行動単位に落とし込んだほうが、より実行しやすくなります。「本を読む」よりも、「3 月5 日、○○書店で買う」「3 月10 日までに第3 章を読了する」「残りを20 日の出張中に読む」としたほうが、より具体的で、実現の可能性が高まります。
「マスター・フォーム・パック」は、あなたの目標の実現をサポートします。
ここからは「マスター・フォーム・パック」活用法は、フランクリン・プランナーのタイム・マネジメント・コンテンツの主要な考え方のひとつである、「時間管理のマトリックス」についてお伝えします。
古くはアメリカの元大統領、アイゼンハワー氏が唱えた「意思決定マトリクス」としても有名ですが、スティーブン・R・コヴィー博士が、『7 つの習慣』の中で紹介し、一躍有名になりました。
「時間管理のマトリックス」とは、すべての活動を「緊急度」と「重要度」という軸に分けて考えるというもので、私たちが行動計画を立てる際に、非常に有効なツールです。
緊急と重要と言われても、あまりピンとこないかもしれません。それは誰でも、自分は緊急なこと、重要なことを行っていると思っているからです。では、なぜコヴィー博士は、この時間管理のマトリックスについて、深く言及したのでしょうか。
この「緊急なこと」と「重要なこと」、この二つのうち、自分自身の将来のため、本当の生産性を上げるために必要なのは、どちらでしょうか?
もちろん「重要なこと」です。決して緊急なことではありません。誰もがそう思うはずです。では、自分自身のこの1週間の活動を振り返ってみましょう。できれば書き出してください。
実際に行ったタスクを振り返ってみってください。その仕事や用事(タスク)は、ほとんどが、時間が迫って行ったことではありませんか? 締め切りぎりぎりの仕事や時間が指定されているミーティングやアポイント、上司から「いつまで」と言われた仕事など、時間(緊急性)によって行った活動ではありませんか?
もちろん、その中には、非常に重要なタスクも含まれていたでしょう。プロジェクトの企画のプレゼンや大きな仕事の締め切りなど、インパクトがあり、どうしても失敗することのできない仕事もたくさんあったはずです。
ここで問題なのは、緊急性ではなく、重要度の観点から行った仕事、タスクがどれだけあったかということです。
要するに、重要度だけで判断して行った仕事やタスクということです。その中には緊急のものや緊急ではないものもあります。
今週の自分、今日の自分にとって重要なこととはどのようなことでしょうか?
今月や来月の売上のこと、来期の戦略のこと、将来のキャリアに役立つこと、これからの仕事に欠かせないこと、大切な人との人間関係に役立つこと、家族のためになること、知識や教養になること、健康増進になること、精神的に良いこと、などがあげられるでしょうか。
ほかにもたくさんあると思いますが、要は自分で重要だと判断し、決めた行動計画のことです。皆さんの行った活動に、こうした「重要度の観点から意思決定した活動」がどれだけ含まれているでしょうか?
次に、私たちの活動を以下のように、緊急軸と重要軸に分け、4つの領域に分類してみます。すると、次の図のようになります。
まず、第Ⅰ領域は「緊急で重要」な領域です。例に書かれた項目を見ると、いかにもすぐにやらなければならないものばかりです。この領域の行動は通常「火消し」もしくは「危機」と呼ばれるものです。多忙なビジネス・パーソンの多くはここで過ごしています。
その下の第Ⅲ領域は、「緊急だが重要ではない」領域です。第Ⅲ領域に共通していえることは、他人からの指示や依頼事であるということです。他人の優先順位につき合っているということもできます。
第Ⅳ領域の「緊急でも重要でもない」は、過剰と浪費の領域、つまり暇つぶしか、のめり込み状態のことがらです。いい意味でののめり込みならいいのですが、暇つぶしで漫画を読み始めたら、2時間も読んでいた、などという経験は誰でもあるはずです。
気晴らし程度なら、健全なリフレッシュになりますが、やり過ぎてしまうと、逆に疲労やストレスを生む、まさに無駄な時間です。
第Ⅱ領域は「緊急ではないが重要なこと」の領域です。重要なのはここです。ここの領域の事柄をどれだけ行うことができるかが、あなたの時間管理のポイントです。
あえて言えば、時間管理をする目的は、この緊急ではないが重要なことを行うためだと言っても過言ではありません。
それは、誰もこの領域のことを「早くしろ」と言ってはくれないからです。自分で計画を立て、意思を持って行わない限り、実行されることはありません。だから、計画と管理が必要なのです。
ビジネス・パーソン、学生、主婦、経営者など、あなたがどんな立場の人であっても、1週間のうち、わずかな時間でもいいので、自分自身の第Ⅱ領域の活動に取り組むことができれば、その成果はやがて計り知れないものになるはずです。
朝5時に起きて、毎日100ページの書籍を読んだあるビジネス・パーソンは、3年後に、その分野のエキスパートになり、やがて会社の役員へと上り詰めました。
また、準備やリスク管理、計画という第Ⅱ領域に時間を割くことで、典型的な第Ⅰ領域の問題であるクレームやトラブルは確実に減少します。
人生を有意義に過ごそうと思うならば、重要度の低い第Ⅲ領域と第Ⅳ領域の出来事を避け、その代わり第Ⅱ領域に時間を割くことが必要です。
「マスター・フォーム・パック」には、時間管理のマトリックスの解説のほかに、次のようなフレームワークを用意していますので、毎週または毎月のプランニングや活動の棚卸はもちろん、2017年度の計画を立てる際にも、ぜひ役立ててください。