出版社にお勤めの山下徹さんは、約15年もの間フランクリン・プランナーを使い続けていらっしゃいます。使い続けるコツ、人生・キャリアに活かす使い方を伺いました。
社会人になってから、自分自身の勉強のために自己啓発関連の書籍を読み始めたときに、「7つの習慣」と出会い、非常に感銘を受けました。
その後編集部門に移ったときに、業務が忙しく、仕事が回らなくなりました。自分で仕事の優先順位もつけられないし、言われた通りにやってもうまくいかない、そもそも優先順位のつけ方が分からないという状態でした。
そこで「7つの習慣」の「大きな石」の考え方を思い出し、その考えを実践することにしました。ただし、自分自身にはまだ「フランクリン・プランナーは使いこなせないのではないか」と思い、3年ほど他社の普通のバーチカルタイプの手帳で修行しました(笑)。
そして満を持して「フランクリン・プランナー」のクラシックサイズ デイリー・タイプを購入しました。
30歳のときに、前の会社を辞めてバックパッカーで世界一周の旅をしたことがあります。その1年間だけは荷物の軽量化のため、ウィークリー・タイプのプランナーを持っていきました。
旅に出たきっかけは、学生のときに、沢木耕太郎さんの『深夜特急』にあこがれていて、29歳のとき「明日死ぬとしたら何がしたいだろうか」と考えたのがきっかけです。
「7つの習慣」に触れていたおかげで、自分に向き合い、「やりたいことリスト」を作成していました。やりたいことリストの中の世界一周旅行を実現するには、一旦会社を辞める必要がありましたが、その先の自分自身の人生を改めて考える時間を持つことも重要だと考え、昔からあこがれていた「バックパッカーの旅」に出ることにしたのです。
それと、旅行から戻って仕事をするにしても、自分自身の仕事をするうえでの判断基準、価値基準を明確にしなければならないと思い、旅の間に自分のミッションや価値観について深く考えようと思いました。
世界を旅すると、いやおうなしに自分は日本人であることを知らされました。旅先で出会う人たちから当たり前のように、日本や自分自身について質問されたとき、自分は日本のことをよく理解していないことに気づかされました。日本人としてのアイデンティティをしっかり持つ必要があることを痛感しました。そういった出来事を体験する中で、自分自身の役割に「日本人」の項目が追加されました。旅に出る前は洋楽や洋画を好んでいましたが、「日本人として何ができるか」を考えることで日本の歴史を書籍などを通して勉強し、気づいたこと、大切なことをプランナーに書き留めるようにもなりました。
自分の価値観を掘り下げ、判断基軸を持つことは、自分の人生には必要なことだと改めて思いました。
スティーブン・R・コヴィー博士もおっしゃっていますが、「正しいところに梯子をかけることができる」こと、そしてその梯子を1歩ずつ上ることができるツールであることだと思います。フランクリン・プランナーによって価値観やミッションを明確にし、それを具体的な目標に落とし込み、日々実行していくことができます。
私は、「人々に情報を発信する」という価値観に沿うことで、仕事においては出版業界という正しい場所に梯子をかけることができ、「出版編集者」になるという具体的な目標を設定することができました。
まさに、フランクリン・プランナーのプロセスに沿って考えた結果です(笑)。
まず、1ヶ月が終わった段階で、スケジュールを中心に翌月の計画を立てます。
同じように、1週間が終わると翌週の計画を立てます。デイリーページを使って、時間の決まっているアポイントや重要なタスクを計画します。
毎日の計画は、毎朝時間をとって、「今日やるべきこと」を優先順位とともに計画します。そのために「A1」のタスクは必ず「日程表の確認」、「A2」のタスクは「メールの確認」と記入しています。
実は、毎日の計画を立てるときに、打ち合わせや会議などのように明確に開始・終了時間や所要時間の決まっているタスク以外の個人の業務については、「このタスクは何時から何時まで」というように、スケジュール欄にきっちりとタスクを書き込むことはありません。必ずしも予定通りには進みませんし、突発的なことも起こります。極端な場合気分が乗らない場合もあります。要は「締めてなんぼ」です。1日を終えた時に、その日にやることがやれていれば良いのです。余裕を持たせることが非常に大切です。
きっちり計画を立てすぎると、スケジュールがずれた場合、逆にストレスになり、続かなくなってしまいます。
フランクリン・プランナーのタスク管理には、「進行中」「先送り」「委任」という非常に便利なタスク管理のマークがあります。できたかどうかだけではないわけです。これは他にはないタスク管理の考え方で、その日にできなくても委任したり、先送りしたりすることができるのです。ですから、重要度と時間を見ながら流動的にやるようにしています。
むしろ私が重視しているのは、スケジュール欄にその日の何時から何時まではどのタスクをしたのかをきちんと記入するようにしています。これは日記的な使い方と言えるかもしれません。そうすることで「この時間何の仕事をしていたのだろう?」と仕事をしているつもりで何となく無駄に時間を過ごしてしまうということがなくなりました。また、結果を記入することで自分がタスクに費やした時間が分かるのと、「今日は1時間半のタスクを4〜5つ」というように、だんだん精度の高いスケジューリングができるようになってきます。
突発的なことが起きたときには、右側のノート欄を使って、「C」の項目として記入します。余裕を持って計画していますから、突発的なことにも対応できます。
また、企画のネタを考えたりまとめたりするときには、ノート欄を使ってしまうと、どこに書いたか分からなくなってしまうので、タブにまとめるようにしています。
価値観、ミッションからスケジュール、タスク、メモなども含めて、すべてこのフランクリン・プランナー1冊に統合、管理したいので、紙が薄いユニバーサル・デイリー・リフィルを使っています。
最初は一番大きなクラシックサイズから始め、自分自身のスケジュールの立て方や使い方がある程度分かったところで、2012年にコンパクトサイズにシフトしました。
一つは、「手帳に使われるな。手帳を使え」です。プランナーには多種多様なリフィルがありますが、すべてを使いこなそうとするのではなく、自分の使いやすいようにカスタマイズして使えばいいのです。手帳を使いこなすことに多くの時間を費やしては本末転倒です。人生を、仕事を、より良くするためのプランナーなわけですから。
そして、先ほどもお話しましたが、「何時に何をやる」と厳密に決め過ぎないことだと思います。今日やるべきタスク、明日でもよいタスクをきちんと把握しつつ、時間の使い方は、余裕を持って、流動的に対応することです。
その方が、何よりもプランナーを「楽に使えます」。長続きする秘訣ではないでしょうか。